【論考】あるけDAOは、DAOなのか?どこら辺が?
この記事は、阪田が設立した任意団体「あるけ」の活動報告です。
はじめに
最近、非営利組織(NPO)とブロックチェーン技術を活用した分散型自律組織(DAO:Decentralized Autonomous Organization)の比較の議論を度々目にする。
NPOは公益性や非営利性を根幹に据え、事業実現を目的とした社会的存在であり、特定の制度の下(社員は総会での議決権を1票持つ/NPOの目的に賛同していれば基本的に誰でも社員になれる等)活動している。
また一方、DAOはインターネット上で境界なきコミュニティを形成し、スマートコントラクトやトークンエコノミーといったテクノロジーを通じて運営目的に対し自律的な意思決定・運用を目指している。
こうした2つの世界が交錯するところに位置づけられるのがまさに「あるけDAO」であると考えている。(あるけDAOの経緯は別のnoteで解説)
- 公平な議決権(みんなで話し合って決める)
- 団体の運営目的に対する抽象的な共感により集った組織
上記のスタイルを持ち運営する私たちは果たしてDAOなのか、どのあたりがDAO的と言えるのか考えてみる。
おっしゃるとおり、ドットジェイピー(NPO団体)は最初からDAOっぽかったんです。だから今回のDAO化もやれる、と感じています。
あるけDAOの構想
あるけDAOは、地域課題や社会的な問題に向き合い、これを解決していくための新たな仕組みを模索している。詳しくはHPや別のnoteで解説していくが、特徴的なのは、1)AIによる初期仮説提案、2)当事者による検証、3)事業者が扱う事実データといった三層構造の組み合わせで、社会課題解決の循環を生み出そうとしている点だ。
例えばこの過程で発生するインサイトデータの扱い方として、自治体や行政など地域のプレーヤーにオープンにすることを想定している。
ここには、オープンデータやブロックチェーン技術を基盤とした透明な情報管理、参加者間でのトークン交換といったDAO的な要素が見出せる。
しかし、伝統的なDAOと比較すると、あるけDAOが「DAO的」と言うには、まだいくつか課題や工夫の余地があることも事実である。
ただのあるけ
NPO as DAO.
たとえば、DAOを名乗るためには、多様な参加者が同等の権限とアクセス権を得て、技術的な制約なしに意思決定に参加できることが理想とされる(参考)。スマートコントラクトによってガバナンスルールが透明に運用され、フォーク(分岐)や相互運用性によって、参加者が容易に他のプロトコルやコミュニティへ移行できる柔軟性も求められる。あるけDAOは、社会課題解決を掲げつつ、そのための基盤を整えようとしているが、現時点では特定の組織(個人)にイニシアチブがある印象を与え、完全に分散的な自律運営とは言い難い。つまり、あるけDAOが「DAOである」と断言するには、さらなるガバナンス設計や技術的実装が必要となる。
公益性をDAOでどう維持するか
DAO as NPO.
制度的・歴史的な背景が異なるNPOとDAOを同列に比較することは、抽象的な範囲を出ない。ただ、「非営利・公益目的をDAOでどう維持するか(維持しうるのか)」を問うことは、非常に建設的な方向性を示している。
非営利・公益目的をDAO上で維持するにはどうすればよいのか。ここで鍵となるのは、DAOの技術的・経済的な強みを、いかに公益性を担保する制度や設計原理と組み合わせるかである。たとえば、DAOにおける投票権やガバナンストークンの仕組みは、多くの場合資本力に依存してしまう。これでは経済的インセンティブが強調され、公益性が二の次になりかねない。社会課題を扱うDAOであれば、投票権は投資額ではなく、地域コミットメントや貢献実績、評判スコアなど、公益性に直結する指標に基づいて割り当てることが考えられる。
さらに、トークン経済は必ずしも金銭的価値や投機的要素に限られない。社会的信用、公共善への貢献度、地域問題解決の度合いを表す指標をトークンに紐付けることも可能だ。トークン保有者は資産としてのトークン価値上昇ではなく、問題解決や進展そのものに価値を見出せるようになる。その際、スマートコントラクト上に公益への再投下ルールを組み込み、たとえば外部から得た収益や資金が必ず一定割合で非営利・公益活動に再配分されるように設計すれば、DAO内で公益性が自動的かつ透明に保全される。
あるけDAOが描く構想では、NPO向けのCRM基盤を整えることで、日常業務を行うだけで社会課題解決に必要なデータが蓄積され、そのデータをAIが解析・仮説提示し、当事者が検証し、事業者が事実として扱うという循環が想定されている。
ここにトークンエコノミーを導入すると、地域で活動するNPOや関係者、当事者は、データ提供や検証作業を通じて新たな価値を創出する。その価値はトークン化され、公益性や実績に応じて分配される可能性がある。このとき、前述のような「公益優先」のトークン設計がなされていれば、そのエコシステムは「非営利・公益目的をDAOで維持する」ための理論モデルとなり得る。
AIが仮説をたて、市民が解決するモデルの課題
もっとも、このモデルの実現は容易ではない。
AIが立てる仮説がすべて有用とは限らないし、その検証作業が参加者にとって持続的なインセンティブを生み出すかも未知数である。トークンが流通するためには、社会的に価値のある成果をコンスタントに生み出し、参加者や関係者がその価値を実感しなければならない。さらに、いくら公益目的をコードに組み込んでも、結局はそれを運用し、メンテナンスし、改善していくコミュニティが必要となる。外部からの評価や監査機能、フォークの容易性による競争的牽制など、多面的な仕掛けが求められる。
それでも、こうした試行錯誤は、これまでの「NPOはDAOたりえるか」という単純な問いでは得られなかった新たな知見をもたらす。公益性維持のために、DAOはどのようなガバナンスルールを取り入れられるのか。(DAO as NPO)NPOが得意としてきた社会的価値創造を、DAO的な仕組みで補強・拡張できるのか。(NPO as DAO)非営利・公益型のDAOモデルは、社会課題解決をより柔軟かつ透明なプロセスに転換し得るのか。あるけDAOは、これらの問いに具体的な方策を提示するための発想や可能性を模索している。
何が言いたかったのか
結局のところ、(NPOを運営していると「これDAOじゃね?」という瞬間が度々あるものの)NPOとDAOは同質の存在ではない。しかし、NPOが元来持つ公益志向と、DAOが持つ分散ガバナンスや透明性、トークンエコノミーといった特性を組み合わせれば、「非営利・公益目的をDAOでどう維持するか」という問いに対する有望なアプローチが見つかるかもしれない。その中であるけDAOは、AI・データ・トークンエコノミー・CRMといった要素を統合し、新たな社会課題解決型の運営モデルを形にしようと試みている。
このようなモデルが成熟すれば、「公益性を担保しながら、持続的かつ革新的なガバナンスを実現するDAO的組織」として、あるけDAOは進化する余地が十分にあると言える。それは、NPO、DAO、そしてWeb3時代の社会経済にまたがる新たな価値創出基盤となり得ると信じている。
編集後記
記事の担当:なおき
noteでハイコンテクストな情報を供給してしまうことが多々あるため、免罪符として「論考」シリーズにしました。あるけDAOがDAOとして存在する方法を、またあるけ以外のNPOがDAOとして「公共性を失わない経済価値」を実現する方法を一緒に考えてくれる人がいたら、お声がけください。