和平
2026.10.14

顧客か専門家に聞く。それが、AI時代の人の仕事になる

#AI#業務設計#働き方

要約

資料を作る、コードを書く。自分で手を動かして作る仕事は、AIに任せられるようになりました。人の仕事は、もう、顧客と専門家がどういう状況でどう判断し、どう動き、どうなったかを書き出して、AIに渡すものに変わり始めています。私はこの仕事を通訳と呼んでいます。材料は自社の中にあり、なければ取りに行きます。結果の責任を負う席は少なく、多くの人は通訳を担います。それでも目指すのは、責任を負う打席に立つことです。若手は、まず通訳の技術を磨くことになります。和平は、社員が通訳を担えるようにする仕事を請け負います。

手を動かす仕事はAIに渡り、人は通訳者になる

資料を作る、コードを書く、帳簿をつける。こうした、自分で手を動かして作る仕事は、もうAIに任せられます。私自身、仕事の判断の多くをAIに任せています。手を動かして作る人を、ここでは担当者と呼びます。

では、任せた人は何をするのか。顧客と専門家が、どういう状況で、どう判断し、どう動き、どうなったか。この実際に起きたことの記録を、私は行動事実と呼んでいます。担当者だった人は、行動事実を集めて書き出し、AIに渡す仕事に移ります。顧客や専門家とAIの間に立つので、この人を通訳者と呼びます。

  • 顧客:何に困り、何を比べ、なぜ買ったか
  • 専門家:何を見て、どう決め、どうなったか

ここで言う専門家は、AIに任せたい仕事をいちばんうまくこなしている人です。資格の有無は問いません。社内にいることも多いはずです。

構造化とは、状況・判断・行動・結果を1組にして並べること

専門家(建築の審査)の例

  • 状況:図面の建物の高さが、敷地の条件に対して高い
  • 判断:規定の上限を超えている
  • 行動:高さを直すよう指示した
  • 結果:直した図面で許可が下りた

顧客の例

  • 状況:料金のページを3回見た
  • 判断:ほかの会社と比べている
  • 行動:資料を請求した
  • 結果:2週間後に契約した

この組を何百と並べると、「この状況なら、こう判断する」という分かれ道が、木の形にできあがります。これを決定木と呼びます。顧客の木には「この状況なら6割はこちらを選ぶ」という割合がつき、専門家の木はほぼ決まった分かれ方をします。結果まで書いておけば、外れた組を見つけて木を直せます。

実例は、もうあります。

  • 専門家:Claude Codeのハッカソンで優勝したCrossBeamは、建築許可の審査の判断を決定木にしました。中身は次の節で見ます
  • 顧客:スタンフォード大学などのチームは、1,052人に2時間ずつ聞き取りをして、一人ひとりを再現するAIを作りました。本人が2週間後に答え直したときの一致を基準にして、その85%まで本人の回答を当てています

CrossBeamは、審査の判断を決定木とスキルと記録に書き出している

CrossBeamは、カリフォルニアで離れ(敷地の中に建てる小さな住まい)を建てるときの、建築許可の手続きを扱う道具です。役所から図面の修正指示が届くと、どう直し、どう答えればいいかをAIがまとめます。作りは、次の4つに分かれています。

  • 知識を、州と市で分けて持つ。州の法律と手引きは28の参照ファイルに分け、1つのスキル(AIに渡す手順書と資料の束)にまとめた。市の条例は別のスキルにして、州の上に重ねる。市のサイトの調べ方も、知識とは別のスキルにした
  • 決定木で、読む資料を絞る。敷地の種類、建て方、状況、手続きの段の4段をたどれば、どのファイルを読めばいいかが決まる。1つの質問で読むのは、28のうち3〜5つで済む。よく使う数字は、先に1枚の表にまとめてある
  • 修正指示を3つに仕分ける。指示を1件ずつ、州の法律、市の条例、図面と突き合わせ、「AIが直せる」「工務店に聞く」「資格者の仕事」に分ける
  • 途中の結果を、段階ごとに残す。修正指示を分けた結果、図面の目次、調べた結果、仕分けの結果を、それぞれファイルに残す。工務店の回答はデータベースに残し、回答書はそこから作る

工務店がやるのは、AIからの質問に答えることだけです。質問には根拠の条文が添えられているので、数秒で答えられます。この道具を作った人がやったのは、審査する人の判断を、決定木とスキルと記録の形に書き出すことでした。これが、通訳者の仕事です。

ただ、許可が下りたかという結果は、まだ道具に戻ってきません。結果まで戻れば、外れた枝を見つけて、決定木を直せます。

材料は自社の中にある。なければ取りに行く

行動事実は、各社の中に閉じたデータです。外から作ったAIが推し量っても、まだ当たらないと私は感じています。使うべき材料は、たいてい自社の中にしかありません。

そして、手元にないことも多いはずです。ないなら、取りに行きます。顧客や専門家のところへ出向き、行動事実を集めてくる。記録やログの中の調査は、AIがやります。人がやるのは、まだ記録になっていない現実を見に行くことです。通訳者は、だれもがUXリサーチャー(顧客が何に困っているかを調べる専門職)のような仕事をします。

私の会社でも、経理はもうこの形で回している

私もCrossBeamを真似て、いろいろ作っています。経理は、この形で回しています。作り方は「経理担当が見る取引を『約2割』に保つ作り方。AIを使う場面を絞って、安く安定させる」に書きました。判定を書けるものはルールベースで決め、おかしな点はAIが「何をすればいいか」に訳し、最後に私が確定します。ほかにも、助成金の申請先を選ぶ判断、議会の議事録の読み方、これから入ろうとしている市場の見立てを、同じ形で組み始めています。

責任者の席は少ない。だから多くの人は通訳者になる

AIは罰を受けられないので、結果の責任を負う人、つまり責任者の役目は残ります。ただ、その席は少ない。日本で起業の準備中か、始めて3年半以内の人は、成人の6.1%です(2023年。米国は14.7%、英国は11.8%)。責任を引き受けたい人は、もともと多くありません。しかもAIで、一人の責任者が負える範囲は広がります。

だから、多くの人が向かう先は通訳者です。

責任者の打席に立つために、若手はまず通訳の技術を磨く

大事なのは、責任者の打席に立つことです。結果を負う人が、最後に名指しされます。

ところが、若手が経験を積む入口は細り始めています。米国では、AIに置き換えられやすい仕事で、20代前半の雇用が減り始めました。上の年代は減っていません。日本でも、若手の採用を止めているという話を、私はあちこちで聞きます。担当者として手を動かしながら覚える、というこれまでの育ち方が通りにくくなっています。

そして、担当者からいきなり責任者には跳べません。AIに判断を渡したことのない人は、AIが出したものの良し悪しを見極められないからです。だから若手は、まず通訳の技術を磨くことになります。顧客や専門家の行動事実を取りに行き、構造化して、AIに渡す。それを繰り返すうちに、何を決めればいいかが見えてきます。次の責任者は、通訳者の中から育ちます。

和平は、担当者を通訳者に変える

和平は、社員が担当者から通訳者に変わる仕事を請け負います。自社で回しているやり方を、そのまま持ち込みます。

仕事はもう変わり始めています。それに焦りを感じているなら、一緒にやりましょう。自社の判断をAIに渡したい、社員を通訳者に育てたい。そういうご相談があれば、お声がけください。最初のご相談では、御社の仕事の中から、AIに渡せそうな判断を一緒に洗い出します。

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